since2018/8/1
満天 舟窪高原 5月
春が待っている 高越山 4月
松田一美のプロフィール
歌誌「玲瓏」編集委員、塚本邦雄に師事
徳島新聞の歌壇選者
「徳島県歌人クラブ」副会長
同人誌「飛行船」同人
上窪青樹のプロフィール
高井北杜に師事 風嶺俳句会主宰
徳島新聞の俳壇選者
徳島県現代俳句協会 副会長
風嶺ホームページ
ふるさとの美しい風景写真をもとに俳句と短歌を詠んでもらいました。
一枚の写真からドラマがはじまり、声が聞こえ、風が感じられます。
冬の高越山は登山家にとって人気の山、手軽に雪山を楽しめるからだ。なぜかというと登山口までの道路に全く雪がないのに、そこから登って高度を稼ぐ度に雪が深くなり、頂上にたどり着くと一面銀世界。一月二月の厳冬期なら1メートルを超す積雪になり、アイゼンなしでは登れないときもある。
そんな時でも、頂上には弘法大師像が屹然と立っていて、息を切らせながら登ってくる登山家を迎えてくれる。その姿を見ると皆自然に手を合わせ拝礼する。
短歌の「ゆんで」は左手。「雪しづり」は雪が枝から垂れて落ちること。「淡雪羹」は寒天を溶かし砂糖を加えて煮詰め、卵白の泡立てたものを合わせて固めたもの。疲れきった登山者に大師様が甘い「淡雪羹」を差し出しているようにも見える。
山頂より 高越山山頂 2月
写真は吉野川市の美しい風景を発信しているアマチュアカメラマン阿部和剛さん。
俳句は上窪青樹さん、短歌は松田一美さんにお願いしました。
この写真は吉野川の中州である善入寺島の河原から撮ったものと思われる。ちょうど、このあたりから見える夕焼けが美しく、近くにある川島潜水橋や、川島町城山の岩ノ鼻展望台から撮影するカメラマンが多くいて、阿部さんもこのあたりでよく見かける。
松田さんの短歌 「あゆずみ」は鮎棲の意で「かげろう」は陽炎、蜉蝣(かげろう)にかかる。すなどり人(魚をとる人)の振る竿が夕焼けを背景に、かげろうのように揺らめいていると歌っている。
上窪さんは、夕焼けから落ち鮎に思いを馳せている。この時期、鮎は産卵を終え力尽きて死んでゆくが、水面を漂う鮎はトンビやミサゴが狙い、川底に沈む鮎は蟹や鯰の餌食になる。この写真の川底には、産卵を終えた鮎もいるはず。最後の命を燃やしながら夕陽のように沈んでいく。
阿部和剛のプロフィール
幼少期からカメラを趣味とし、
ふるさと吉野川市を撮り続けている
個展、出版活動の他、SNSを使った
吉野川市の魅力発信にも力を入れている
SNSは「美しい吉野川市」で検索
舟窪ツツジ公園が賑わうのは花が咲く4月~5月だけだが、陽が沈めば静寂の闇につつまれる。星明かりのなか目に映るのは黒い樹木のシルエットだけ、だが夜明けともに闇がほころびはじめる。
ここは天体観測には絶好の場所。標高1000メートルで空気が澄んでいる上、大きな木もないため視界を遮るものもない。しかも国道から車で30分もあれば充分の距離。夜の山道が怖くないならロマンチックな星空が楽しめる。
国道192号線から舟窪つつじ公園に至る道にあるトンネル。
舟窪ツツジ公園から高越山に登る道もあり、この道なら起伏も少なく手頃なハイキングコースとなる。
この写真は舟窪から降りてきた帰り道。曲がりくねった山道を抜け、道幅も広くなり車を運転する者はこのあたりで「ああ、山から戻ってきた」とホッとする。
俳句の「向こうは春と決めている」 そう、この先には「ふいご温泉」があり多くの登山者がここでほっこりと温まって帰る。
短歌の「櫻の園」はロシアの劇作家チェーホフの戯曲。過去の栄光を忘れられない没落貴族を描いたロシア文学で、ラストは桜の幹に打ち込まれた斧の音が響く。トンネルの暗闇は没落を連想し、その向こうに見える桜から斧の音が聞こえそうな気がしてきた。
夕暮れの漁師 9月 吉野川
企画・制作・文 高木 純
同人誌「飛行船」同人
徳島ペンクラブHP管理者
同人誌「飛行船」ホームページ
高越山にある高越寺はいつもひっそりとしている。なにしろ標高1100メートルの位置にあるのだから、そうそう人が来られるものではない。しかし年に一度、8月18日だけはこの写真の通り、おおぜいの山伏が集まり夜を徹して護摩が焚かれる。
短歌の一霊四魂(いちれいしこん)とは、人の霊魂は天と繋がる一霊「直霊」( なおひ)と四つの魂から成り立ち、天と繋がっているという考え。 俳句も短歌も、年に一度、八月のこの時だけ、護摩の炎によって天と通じていると詠んでいる。